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基本契約と個別契約、請負契約と準委任契約など、契約の種類や注意点について

    案件を受発注するにあたって必ず必要になるのが「契約」です。弁護士と顧問契約して契約について相談できる環境があれば安心ですが、多くはご自身もしくは社内で判断して契約締結に至ると思います。今回は契約の種類や注意点について、まとめてみました。

    はじめに~基本契約と個別契約について

    クライアントや発注先とはじめて取引させて頂く際に締結する契約は、大きく分けて「基本契約」と「個別契約」の2種類があります。

    基本契約

    基本契約には契約締結先であるクライアントもしくは発注先との全取引に関わる条項で作成します。同じ契約締結先と複数の案件をやり取りする場合、毎回膨大な契約内容の確認を実施することは両社負担になります。そのため、基本的な契約内容は「基本契約」として締結し、案件ごとの具体的な制作対象や納期、費用等は別途「個別契約」として締結する、という流れが一般的です。

    基本契約には、例えば「委託料支払いの際に振込手数料をどちらの負担とするか」「納品後に知的財産権が譲渡されるのかどうか」「再委託が禁止かどうか」といった項目が含まれます。主に注意したいポイントは下記の通りです。

    • 甲乙
      • 甲=発注側、乙=受注側、となるのが一般的です。3社契約となる場合、3社目は「丙」と表記されます。
    • 個別契約について
      • 「案件ごとの詳細は個別契約で定める」といった内容になりますが、案件詳細も含めた基本契約という内容で締結を求めらる場合も有りますので、その場合は基本契約のみで締結しますので、契約締結先と確認しましょう。
    • 損害賠償について
      • 受注側としての契約時は特に注視したい項目です。
        • 最も重要なのが損害賠償額の「上限です。契約書内を「賠償」と「上限」という文字で検索し、賠償額の上限が明記されているかどうかを確認しましょう。「甲または乙に生じた損害を賠償する」といった一文だけでは青天井で、2次的3次的に生じた損害も含めた賠償になりかねません。必ず「甲または乙に生じた損害を個別契約で定めた委託費用を上限として賠償する」というように、委託費用を上限とする一文を明記することをオススメします。
        • 甲の責であれば乙が、乙の責であれば甲が、というように、両社が平等の内容であるかどうかを確認します。
    • 再委託について
      • 受注側であった場合、手が足りない場合に他の外注先へ再委託したい場合もありますので、「承諾を得れば再委託可能」という一文があるかどうかを確認しましょう。
    • 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
      • 納品後、成果物に対して障害や不具合等が発覚した場合に、委託金額内で対応する必要がある期間を定義する項目です。6ヶ月間もしくは1年間のどちらかで締結することが多いです。
    • 知的財産権
      • 発注側として重要な項目で、納品物の著作権は納品と同時に譲渡される、著作人格権を行使しない、といった一文があることを確認しましょう。著作権は原則、著作物を創作した人に帰属します。そのため、契約で著作権の譲渡について定めておかないと、ロゴの画像をパンフレットで使おうとしたところ著作権料を求められる、といった事になりかねません。
    • 「金」に関わる項目
      • 契約書は企業ごとにもちろん内容が異なります。そのため1つの観点として、契約書内を「金」という文字で検索してみましょう。「金銭」「代金」「返金」などが書かれた条項は、特に注意深く確認した方が良いです。

    補足:秘密保持契約について

    秘密保持契約の条項は基本契約内に含むことも多いですが、基本契約に至る経緯で事前に情報をやり取りさせて頂くにあたり、秘密保持契約(NDA)を事前に締結することも多くあります。

    個別契約

    個別契約では案件ごとの具体的な制作対象や納期、費用等を定めます。個別契約を締結する際は別途見積も合意が取れている状況であるかと思いますので、見積書や見積の前提資料と紐づけるような内容になります。

    個別契約書に盛り込まれる状況は主に以下のような内容です。

    • 案件の名称
    • 案件の内容
    • 委託費用
    • 委託費用と紐づく見積書の見積番号等
    • 納期
    • 納品方法
    • 検収期間
    • 委託費用の支払方法
    • 特記事項
      • 対応可能な曜日や時間帯、深夜対応は別途相談、といった内容

    業務委託契約、請負契約、準委任契約

    基本契約と個別契約について書きましたが、これらの中にも更に「業務委託」「請負」「準委任」という種類の名称の契約があります。ここではこの3種類の契約についてまとめてみます。

    業務委託契約

    業務委託契約というのは請負契約や準委任契約をまとめた俗称で、基本契約書は「業務委託基本契約書」という見出しであることも多いです。あくまで「業務を委託するための契約」という意味で、契約形態の分類ではありません。

    請負契約

    請負契約で重要なポイントは成果物を完成させるという「完成責任=納品義務」があり、成果物の納品後、検収が完了してから報酬が支払われる契約形態です。サイト制作やシステム開発では基本的な契約形態ですが、成果物に対して「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」が生じることや、スケジュール管理、見積時点の要件定義の精度、着手後に出た要求の整理など、敷居が高い契約形態でもあります

    一方、請負契約で実績のあるフリーランスや制作/開発会社は信用が高く、より良質な案件に関わることが出来る傾向があります。納品完了まで滞りなく進行するにはある程度の経験が必要ですが、やり遂げればクライアントからの信用が高くなり、継続的な受注に繋がることも多いです。

    資金繰りに注意

    注意点として、特にシステム開発案件では納品まで半年〜1年を超えることも少なくありません。そのような案件で納品完了後の請求となると、それまでの期間の入金が無く、資金繰りが大変になってしまいます。そのような案件の場合は「着手金/中間金/納品後」のように、複数回に分けて請求させて頂けるよう、クライアントに相談してみましょう。

    準委任契約

    準委任契約で重要なポイントは完成責任」が無いということです。受注側は善管注意義務をもって決められた時間、作業を遂行するという契約形態で、エンジニア業界では「SES(システムエンジニアリングサービス)」と呼ばれています。準委任契約の多くは「人月単価」「人日単価」といった時間による単価を基準とした契約となり、実働時間を元に請求する流れとなります。実際に作業しているかどうかを確認するため、過去はクライアントの現場に出向して作業することが多かったのですが、近年ではリモート作業可能という案件も多くなっています。

    「え、それなら請負契約より準委任契約の方が受注側としては気楽じゃない?」と思いますよね。しかし、当然そのような案件ばかりではありません。発注側としては、例えば「プレスリリースの準備もしているので、この日までにリリースすることが必須」といった事情もあります。発注者がこのような状況であれば、請負契約の前提で契約を求められることが多いです。

    「新規事業を立ち上げるがシステム要件をまとめきれないので、進めながら調整したい」「既に運用中のシステムがあり、定期的にシステム改修を進めたい」このような需要のある発注側が、準委任契約で技術者を確保する、という傾向があります。

    また、準委任契約にも2つの種類があります

    履行割合側

    作業時間が委託費用の支払い条件となる契約形態です。納品物というわけではないですが、請求書と併せて作業内容や作業時間を書いた勤務表を提出するような内容が一般的です。

    成果完成型

    一定の成果物を納品することが委託費用の支払い条件となる契約形態です。「請負契約と何が違うの?」と感じるかもしれませんが、準委任契約の成果完成型は、あくまで「決められた期日までの成果を納品する」という内容で、「完成責任は無い」というのが大きな違いです。また、完成責任が無いため、「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」も生じません。

    システム開発を担当していて決められた期日までに出来たプログラムを指定されたサーバーにアップロードする、システムコンサルティング業務でレポートを提出する、といった内容が該当します。

    知人からの紹介案件に注意

    時には親族、時には友人、はたまた取引先からの紹介など、近しい知人から案件を紹介して頂ける場合があります。このような時に、「親しい間柄だから」という空気感から、契約を締結せずに案件を進行してしまうような事例を何度も見たことがあります。結論として、「契約を締結せずに進める案件で良い事例は少ない」です。

    契約というのは基本的に、受注側と発注側どちら目線でも、「物事が悪くなったとき」のために締結します。想定していた機能が実装されていない、後から要求がどんどん増えて収集がつかない、とはいえ追加予算は出してもらえない、結果的に完成しない。このようなことになると、お互い不幸ですし、せっかくの「親しい間柄」や「近しい知人との信頼性」を損なうきっかけにもなり得ません。

    親しき中にも礼儀あり。近しい知人からの紹介案件「だからこそ、契約は通常の案件同様に締結することが礼儀でもあり、責任をもって案件を請ける重要な姿勢でもあります。

    著作権、著作人格権

    基本契約の項でも少し触れましたが、特にデザインやイラストの制作案件で注意すべきポイントが「著作権」と「著作人格権 」です。

    著作権

    まず著作権は原則、著作物を創作した人に帰属します。そして著作権は、納品された成果物に対して委託費用を支払っただけでは譲渡された事にはなりません。そのため、「納品時点で成果物の著作権を譲渡する」という条項を盛り込んだ契約を締結しないと、成果物は納品されたものの、著作権は制作者のままとなってしまいます。

    この成果物がイラストであった場合、納品物以外で使用すると、著作権をもった制作者から著作権料を請求される可能性があります。このような話は実際に起こっており、著作権譲渡の契約が無くイラストをパンフレット等に使えず、全て作り直したという事例もありました。特に発注者側は、契約内容に注意しましょう。

    著作人格権

    著作人格権は著作物を公表するときに、著作社名を表示するよう求めるといった権利です。テレビで芸能人の写真が表示されるときに撮影者の名前が表示されているのを見たことがあるかと思います。そのように名前を表示してほしいと主張する権利が「著作人格権」です。

    著作権は契約により譲渡できますが、著作人格権は著作者本人のみが持つ権利で、譲渡できるものではありません。ただ、著作物を使うたびに著作者の名前を表示するというのも不都合な場合があります。そのため、「著作人格権を行使しないこと」といった条項を契約に含めて締結するようにします。

    契約は電子押印を推奨

    かつては契約書と言えば紙で2部用意し、甲乙どちらも署名押印して互いに1部ずつというの通例でした。契約の額面に応じた収入印紙の貼付が必要で、郵送にも費用がかかり、手間も時間もかかる。7年間の保管義務ということもあり、保管場所も必要と、あまり良い事がありません。

    2022年1月以降は電子帳簿保存法の施行による電子データでの保存義務化に伴い、契約も電子押印が推奨されています。大きなメリットは「収入印紙が不要」「郵送費不要」「保管場所不要(PCもしくはストレージ)」など、紙のデメリットが全て解決されたといって過言ではない内容です。

    自身が受注側でクライアントから紙での締結を求められれば合わせるしかないですが、自身が発注側であれば是非、電子押印をオススメします。

    まとめ

    1. 基本契約と個別契約の違い
    2. 業務委託の種類
      1. 請負契約
      2. 準委任契約
        1. 履行割合型
        2. 成果完成型

    これらのような契約の種類について理解し、損害賠償や著作権などの注意点をふまえ、契約締結は慎重に進めましょう。

    以上、契約の種類や注意点についてでした。

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