事業主が常に抱える不安は「収益の安定」ではないでしょうか。大きなクライアントと長年案件が続いていたとしても、保守案件で月々固定の利益があったとしても、案件はいつか終わることも考えなければいけないですし、年を重ねるといつまでも同じように仕事は出来ないかもしれません。そこで今回は「収益の安定」に対するリスクヘッジとして、不労所得を積み上げるための「投資」の重要性について書いてみます。
資産となる対象に投資する=不労所得を積み上げる
主となる事業で得た営業利益を原資として、不労所得を積み上げるために投資する。言葉で書くととてもシンプルですが、実行することはなかなか難しいと思います。ここでは投資に対する考え方として「時間や技術の投資」と「営業利益を原資とした投資」に分けて書いてみます。
※ちなみに本ブログが「ITフリーランスのためのミニマム経営術」という前提のため、不動産投資や株/FXといった投資は除外しています
時間や技術を投資する
投資はお金だけではありません。時間と技術を使って収益を生むコンテンツやサービスを作るというのも、不労所得を得ることに繋がります。
例えば不動産業界の場合、「土地を買ってアパートを建てて貸し出す」までを自分自身で行える人は少ないでしょうし、初期投資も多くかかります。但しIT業界の場合、「土地」に該当するサーバーやドメインは年間数千円程度で確保でき、「アパート」に該当するコンテンツやサービスはアイデア次第で時間と技術を使えば構築できます。「貸し出す」に該当する収益化は、広告収入やサブスクリプションなどで確率できるため、時間と技術をかければ自分自身で構築することが可能です。
時間を確保するためには、自分が請けている案件を外注に依頼するといったことが必要になるかもしれません。それにより営業利益は下がりますが、空いた時間を「投資」する、という意識をもって、次のような行動に移してみると良いと考えます。
ブログをはじめてみる
不労所得、広告収入、というキーワードでまず思いつくのは「ブログ」ではないでしょうか。そのため、ブログは既に運用している、もしくは過去に運用していた、という人も多いと思います。しかし一方で、収益化となると話は別で、ブログを書いてはいるものの9割以上が収益にはつながっていない、という統計もあります。
とはいえ、始めてみて継続しないと、可能性はゼロのままです。読み手にとってどのような情報が必要かということを念頭において、ブログのお題を考えてみることが良いと思います。
収益モデルを考慮してブログのお題を考える
収益モデルは主に「広告収入」で、クリック報酬型である「GoogleAdsense」と、成果報酬型である「アフィリエイト」が基本です。ブログのお題を検討する際に、どのような収益が適しているかも同時に考えておくと良いでしょう。
例えば、「IT業界以外からIT業界に転職して感じたこと」といったお題でブログを書く場合、「転職」関連のアフィエイト広告が適している可能性があります。「ドラマを観た感想を書いてみた」といったお題であれば、FODやU-NEXTといった動画配信サービスのアフィリエイト広告にも繋がります。
収益モデルも検討しながら、なるべく継続して執筆しやすいブログのお題を考えるのが重要です。
サービスを企画/開発してみる
サービスといえばYahoo!のようなポータルサイト、X(旧twitter)のようなSNS、無料ホームページ制作や販売管理システムといったSaaS系サービスなど、多岐にわたります。業務で身につけた技術で、自身で企画したサービスを開発してみることで、技術的な実績、エンドユーザーの問い合わせ対応、集客のためのマーケティング及び分析など、多岐にわたる経験にも繋がります。
また、サービス次第ではサブスクリプションなどで定期的な収入にも繋げられる可能性があります。
YouTube/その他SNSやメディアでコンテンツを配信してみる
一時期は小学生のなりたい職業ランキングで一位となるほど注目を集めた「ユーチューバー」、InstagramやTiktok等のSNSで注目を集めた「インフルエンサー」など、自身もしくはグループでコンテンツを配信して集客力を持つことで収益化する、という手法もあります。動画の再生数に応じた利益や、インフルエンサーとして広告費を得るなど、収益モデルも様々。
一時期の盛り上がりからは落ち着いてきたものの、独自コンテンツの価値はAIが普及してきた昨今でも評価は高いため、企画が得意な人は是非チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ブロックチェーン/NFTを作ってみる
「NFT」も一時期はNFTアートが数十億円で落札されるなど、大きな盛り上がりをみせたコンテンツです。急騰したNFTの価格ですが、現在は落ち着いてきており、利用シーンの幅も広がっています。ここでは「NFTゲーム」を例に書いてみます。
NFTゲーム
「NFTゲーム」はブロックチェーンの技術で作られたゲームで、ゲームの中で利用できるアバターやアイテム、土地などがNFT化されて販売されています。代表的なNFTゲームの中に「The Sandbox」がありますが、アイテムや土地の売買、ゲーム内の仮想通貨「SAND」のステーキングなど、市場として確立されています。
NFTゲームは本来、遊びながら稼げる「Play to Earn(P2E)」が魅力ですが、日本の法律では制限が多く、代表的なNFTゲームである「The Sandbox」でも、日本人の利用者は一部の機能(特に報酬関連)が制限されています。ただ、今後NFTゲームがより普及すれば、日本の法律が変わり、日本でも「Play to Earn(P2E)」が普及される日が来るかもしれません。
ゲームが好きな人は、今のうちにNFTゲームに触れておくのも良いかと思います。
営業利益を原資として投資する
利益を原資として投資する場合、一般的には「不動産投資」や「株/FX」といった対象を思い浮かべるのではないでしょうか。ここではIT業界ということで、「ウェブサイトのM&A」をご紹介します。
ウェブサイトを買収する
世の中にはYahoo!やFacebookなど、ウェブサイトやシステムを事業としている企業が多く存在します。小規模のブログやECサイトも、規模は違えど収益を得ることが可能なため、一定の実績のあるウェブサイトやアカウントが、収益事業としてM&Aの対象となっています。
企業及び事業のM&A業界は古くから存在しますが、ウェブサイトのM&Aと聞いても、なかなかピンと来ないかもしれません。いくつかの項目に分けてご説明します。
案件の種類
取引されている案件(=ウェブサイトやアカウント)の種類は様々です。ここではいくつかの種類に分類してご紹介します。
- 広告収入型:
- GoogleAdsenseやアフィリエイト等で収益が出ているブログ等が主な対象です。ウェブサイトM&Aで一番取り扱いが多い種類です。
- ECサイト型:
- AmazonやebayといったECプラットフォームで、販売実績のあるアカウントが主な対象です。
- SNS型:
- YouTube等で一定の再生数やフォロワーを持ったアカウントが主な対象です。
- サービス型:
- ウェブアプリケーション等、サービスを提供しているシステムが主な対象です。取扱数としては少ないです。
仲介業者
ウェブサイトM&Aを始める際は、基本的には売り手と買い手を繋ぐプラットフォームを提供する仲介業者を利用します。プラットフォームに公開されている案件を見て、気になる案件があれば問い合わせて交渉、交渉が成立すれば契約締結後に移行作業開始、といった流れになります。仲介業者は多く存在しますが、有名なところは下記の通りです。
- サイトキャッチャー
- ラッコM&A
- サイトストック
- サイトマ
- UREBA
価格の目安
価格は様々ですが、いくつかの目安をもって妥当かどうかを検討し、必要に応じて価格を交渉する必要があります。
- 売上:
- 価格の目安として一番わかりやすい基準は売上、特に粗利(売上 – 運営コスト)を基準として、5年回収以内であれば、良いのではないかと思います。案件情報で「売上」「運営コスト(サーバー等の維持費+人的コスト等)」を確認できますので、例えば月の粗利が5万円の場合、「粗利5万円 x 60ヶ月 = 300万円」以内であれば、検討の余地があると考えます。
- アクセス数:
- アクセス数が多いのに売上が少ないといった場合、買収後にマネタイズを強化することで売上を伸ばせる見込みがあります。
- 記事数:
- ブログの場合、記事を執筆するのは、自分で書いても外注に依頼しても、時間とコストがかかります。文字数や品質によりますが、1記事あたりの単価を想定しておくのも、価格の目安として重要です。目安としては1文字5円〜20円程度(一般的な情報やAIベースで執筆されたような記事は低単価 〜 SEOを考慮した専門性の高い記事は高単価)です。
- 会員数/フォロワー数:
- 会員制のウェブサイトや、SNSのフォロワー数を獲得するのは時間がかかります。その時間を買うという意味で、会員やフォロワーの数も価格に影響します。
- 信用:
- Amazonの販売アカウントはゼロから自分で作成すると、初期は制約が多く、集客も大変です。一定の販売実績を持つ販売アカウントを得ることで、ECの収益化を早めることに繋がります。
デューデリジェンス
デューデリジェンス(Due Diligence)は、投資を行う際に、投資対象の価値、リスク等を調査することを意味します。下記のように様々な観点から調査し、買収後に売上やアクセス数が急減するといった事態にならないよう心がけましょう。
- 売上推移:
- 過去1年ほどの売上推移を開示して頂いて、推移を確認します。急増/急減といった変化があった場合はその要因を確認し、買収後に売上が急減する要因にならないかを精査します。
- アクセス数推移:
- 過去1年ほどのアクセス解析情報を開示して頂いて、推移を確認します。急増/急減といった変化があった場合はその要因を確認し、買収後にアクセス数が急減する要因にならないかを精査します。
- 販売促進手法:
- 売上とアクセス数どちらにも直結しますが、広告出稿やSNS配信といった販促手法を確認して、売上やアクセス数維持のためにその手法を継続する必要があるか、自身でその手法を継続できるか、といった判断が必要です。
- 運用年数:
- 運用年数が長いかどうか、長い場合は同じコンテンツで運用が続いてきたか、といったことを確認します。運用年数が1年未満などと短い場合、売上やアクセス数が一時的で急減する危険性がありますので、注意が必要です。
- 運用性:
- 例えば漫画のレビューといった情報を配信しているブログの場合、継続的に新しい漫画のレビュー記事を追加する運用が必要となります。このような定期的な運用が可能かどうかも重要な判断材料です。
- 流行性:
- 特定のゲームやドラマなどを対象としたブログの場合、買収後に需要が下がり、アクセス数や売上が下がる懸念があります。一過性の流行でなく、少なくとも回収目処の期間以上は継続見込みがあるかどうかを判断します。
- 権利:
- 記事や画像、Wordpressのテーマなど、売り手が譲渡する権利を有しているかどうかを確認します。特にWordpressの有料テーマは第三者への譲渡を禁じている場合が多いため、事前に確認しておく必要があります。
ウェブサイトM&Aの進め方
ウェブサイトM&Aの主な進め方は下記の通りです。
- 仲介業者のプラットフォームで案件を探す
- 案件情報の一部は会員登録後にしか閲覧できないこともあるため、気になる案件情報があれば会員登録して確認しましょう。
- この時点ではURLやアクセス数の推移など、案件対象のウェブサイトを確認する情報はありません。
- 交渉申込
- 交渉申込後、売り手から承認されるとURLやアクセス数の推移などを確認できるようになります。
- この時点でのキャンセルは可能で、ここまでで買い手側に費用はかかりません。但し、購入意思が無いのに何度も交渉申込とキャンセルを繰り返すと、プラットフォーム側から注意される懸念がありますので、「この条件なら購入したい」という案件にのみ、交渉申込するよう心がけましょう。
- デューデリジェンス
- 実際にウェブサイトやアカウント等を確認して、調査します。
- 売り手が提示している価格が妥当かどうかを検討します。
- 価格交渉
- 必ずしも売り手が提示している価格で購入しなければいけないということはありません。デューデリジェンスの結果、妥当であると考える価格を提示して交渉することも重要です。
- 他に交渉中の買い手がいる場合、安すぎる価格での交渉だと売り手に断られてしまうため、他の買い手がいるか、案件が公開されてからどの程度の期間が経過しているか、といった観点も重要な交渉材料です。
- 契約締結
- 価格交渉がまとまれば、契約締結に進みます。
- エスクロー入金
- M&A業界では買い手が先にプラットフォーム側に入金し、移行作業を終えて買い手による検修完了後、プラットフォーム側から売り手に代金が支払われるという「エスクロー」という仕組みが基本です。この「エスクロー」により、未入金や移行未完了といったトラブルを防ぐようになっています。
- 移行作業開始
- サーバーやドメインについて、名義変更とするか別アカウントに移行するか、移行するなら移行作業は誰が対応するか、といったことを事前に決めておく必要があります。
- プラットフォーム側で有料で移行を代行してもらえるサービスもあります。
- 買い手による最終検収
- 検収期間は移行を含め概ね2週間以内となりますが、不安があれば契約締結時点で長めにしていただくよう相談しておきましょう。
- 譲渡完了
- 買い手からプラットフォーム側に検収完了を伝え、プラットフォーム側から売り手に代金が支払われることで、譲渡完了となります。
- 契約によっては譲渡完了後も一定期間の運用サポートを売り手から受ける、といったこともあります。
ウェブサイトを売却する
買収の手順をふまえ、逆に仲介業者のプラットフォームに案件情報を掲載して、売却することで利益を得ることも可能です。自身で育てたウェブサイトや、買収して運用することで育ったアカウントなど、売上やアクセス数が多い状態で売却を検討するのも良いでしょう。
売却する場合は、買収するケースの逆の立場として、買い手がどのような観点で交渉してくるかを想定しながら、案件情報を作成するようにしましょう。
まとめ
投資を常に頭において、少しずつでも不労所得を積み上げていくことで、精神的な安定にも繋がり、事業の安定にもつながります。
技術や時間を使った投資、営業利益を原資とした投資、どちらでも不労所得以外に「総合的な技術的知見」や「マーケティングの観点」、「売上/アクセス数に対する理解」など、IT業界で生きるうえで重要な経験も得ることに繋がります。
以上、リスクヘッジとして不労所得を積み上げるための「投資」の重要性についてでした。








