PM手法/資料編

ホームページ制作やシステム開発の契約書の種類や、見るべき重要なポイント

    IT業界にかかわらず、案件を受注する際に必要となる手続きが「契約」です。人間関係や規模など、場合によっては「契約書なんかいらないよ」という場面もあるかもしれませんが、基本的には契約を締結してから案件が始まるというのが一般的です。

    今回はホームページ制作やシステム開発の契約書の種類や、見るべき重要なポイントを書いてみます。

    甲、乙、丙

    まずはじめに基本的なことですが、契約書の中では社名を「甲、乙、丙」というように表記することが一般的です。契約書の冒頭で「株式会社〇〇(以下「甲」とする)」というように書き、以降の内容では「甲が乙に対し~~~」というように表記されます。

    基本的に「発注者=甲」「受注者=乙」となります。「丙」はあまり見かけないかもしれませんが、三社間契約の場合に使用されます。この記事内でも上記のように甲乙で表記することにしました。

    それでは手順に沿って契約の種類をみていきましょう。

    NDA、秘密保持契約、機密保持契約

    まず一番初めに締結するのが「NDA(Non-Disclosure Agreement)」です。日本語では「秘密保持契約」や「機密保持契約」といった表現となりますが、この二つは特に違いはありません。どちらかというと「秘密保持契約」の表現の方が多いかと思います。

    案件相談を受けて打ち合わせをしたうえで、「見積をお願いしたい」となった場合、見積のために必要な情報や資料を頂く必要が出てきます。但し、そのような情報や資料は「外部に漏らしたくない」内容を含むことが多いため、「情報や資料を外部に漏らさないでください」という意図で締結するのが「NDA」です。

    多くの場合、どの企業でも近しい内容となっており、「NDA締結前から既知の情報やインターネット等で公開されている情報を除く」「情報や資料は善良なる管理者の注意義務をもって管理する」というように、「外部に情報を漏らさないことを約束します」という内容になっています。

    基本契約と個別契約

    見積の稟議が通り、正式に案件を受注することになると、「基本契約」と「個別契約」を締結します。

    基本契約

    基本契約には全ての取引に共通する項目を明記します。案件ごとに異なる内容、案件名や金額、納期といった内容は別途個別契約で定めるという条項を定め、別途個別契約に明記することが一般的です。

    基本契約は多くの条項がありますが、特に注意すべき条項がこちらです。

    契約の解除

    解除の条件が甲に偏り過ぎていないかどうかを確認しておきましょう。

    一般的には「契約に違反した状態に対して、相当の期間を定めて催告したにもかかわらず、是正しないときは、契約を解除できる」といった文言になります。ただ、一定の条件に対しては「催告なく全部もしくは一部を解除できる」という条項があることが多いので、その内容は念のため精査したほうが安全です。

    損害賠償

    この条項は必ず重点的に確認しましょう。

    まず何よりも重要なのは、損害賠償の「上限」という表記です。「個別契約で締結した金額を上限として損害の賠償をしなければならない」というように、損害賠償の上限があることが明記されていることが重要で、この表現が無い場合、損害賠償額が青天井=無制限ということになってしまいます。

    「損害賠償になんてそうそうならないから」と考えるかもしれませんが、契約とは訴訟等となった時の基準とするために締結します。もちろん損害賠償や訴訟といったことにはそうそうならないのですが、だからこそ契約内容としては厳格に定める必要があります。

    契約書に対して「金」「賠償」「保証」といった単語で検索をかけ、「上限」という表現が無い場合は、追加して頂くように交渉したほうが良いと考えます。

    契約不適合

    こちらは請負契約が対象ですが、納品物に対する品質に対して責任を負うという条項です(準委任契約の場合は「善管注意義務」)。

    この契約不適合については業務要件やシステム要件をふまえた要件定義が重要になりますが、契約の観点では「検収」や「引き渡し」の条項を確認しておいたほうが良いでしょう。具体的には「乙が納品後、甲は10日以内に検収結果を乙に通知する」といった「検収の期限」が明記されていた方が安全です。

    基本契約に対しては必須というほどではありませんが、検収が完了しないと納品に至らないため、検収に対する期日の基準が盛り込まれている方が、契約の観点では良いと思います。

    個別契約

    個別契約には案件別の具体的な内容を明記します。内容としては見積書に記載する内容と同等になります。

    • 案件名
    • 作業内容
    • 納品方法
    • 委託代金
    • 委託代金の支払時期と支払方法
    • 対象となる見積書の見積番号や機能要件一覧などの書類を別添として添付

    この中で重要となるのは「支払時期」です。「月末締め翌月末支払い」といった「支払サイト」を定めますので、入金サイクルに影響する大切な内容です。また、長期間の案件であれば複数回に分けて入金してもらうよう交渉しておかないと大変です。

    入金サイクルや支払いサイトについては下記の記事でも書いていますので、ご参考までにご一読下さい。

    続いて契約の種類に進みます。

    業務委託契約

    IT業界の案件の多くは「業務委託契約」という分類の契約になります。甲が特定の業務を乙に委託するための契約となりますが、「業務委託契約」の中でも「請負契約」と「準委任契約」の2つに大きく分類されます。

    請負契約

    ホームページ制作でもシステム開発でも、古くからある契約形態が「請負契約」で、下記のような特徴があります。

    • 報酬対象=成果物
    • 完成責任=あり

    請負契約はクライアントの要求を整理して成果物を作成し、納品検収後に御請求、という契約のため、「検収に至るまで完了しない」というのがポイントです。納期に向けた進行管理がしっかり出来ていないと、いつまでも完了しないという状況にもなりかねません。また、「契約不適合責任」という法律があるため、要件を満たさない納品物は認められず、品質も求められることになります。

    報酬対象が成果物のため、時間を拘束されることは無く、進行管理が出来ていれば効率よく対応できる契約形態でもあります。

    準委任契約

    主にシステム開発案件で多くなってきた契約形態が「準委任契約」で、下記のような特徴があります。

    • 報酬対象=業務遂行
    • 完成責任=なし

    準委任契約は業務を遂行すること自体が報酬対象で、「完成責任が無い」というのがポイントです。月額単価や稼働時間を契約で定めて、時間内に出来る範囲で業務を遂行するという契約のため、請負契約のような「完成責任」が無いことが大きな違いです。また、月額単価が定められているため、収支の計画が立てやすいというメリットがあります。

    一方で、成果対象が業務遂行で稼働時間を確保する契約のため、時間を拘束されるというデメリットがあります。また、場合によってはクライアント先に出向するケースも多いため、クライアント社内の人とのコミュニケーションも課題になります。

    近しい内容で、チームで参画する「ラボ型契約」という形態もありますが、契約内容としては準委任契約が基本となります。

    まとめ

    いかがでしょうか。本来なら弁護士にリーガルチェックをお願いしたい事案ではありますが、とはいえ自分自身で契約書をチェックする場面も多いと思います。契約は自信を守るために重要な書類ですので、特に損害賠償の条項は必ず押さえておくようにしましょう

    また、「請負契約」と「準委任契約」についても、違いをしっかり認識しておくようにしましょう。

    以上、ホームページ制作やシステム開発の契約書の種類や、見るべき重要なポイントでした。

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