IT業界ではホームページ制作でもシステム開発でも、受託でも準委任でも、売掛/買掛が基本となります。この記事では売掛金と買掛金の支払いサイト=お金の入口と出口を意識して、入金サイクルをコントロールすることについて書いていきます。
売掛金と買掛金について
まずは「売掛金」と「買掛金」について、改めて整理してみましょう。
売掛金について
売掛金は、先にサービスを提供して、それに対して請求書を発行し、後日代金の支払いを受けることが予定されている金額のことです。ホームページ制作の例であれば、まず先に制作して納品後、請求書を発行し、決められた期日までに入金される金額のことで、まだ支払いを受けていない未収金のことです。
買掛金について
買掛金は、先にサービスの提供を受けて、それに対して請求書が発行され、後日代金の支払いを行うことが予定されている金額のことです。外注に作業を委託する際に生じる金額で、制作を委託して制作物が納品された後、請求書を受け取り、決められた期日までに支払う金額のことで、まだ支払っていない未払金のことです。
支払いサイトついて
続いて売掛金と買掛金を前提として、支払いサイトについて考えてみましょう。
売掛金の支払いサイトは30日で交渉
例えば1月に案件を受注して、2月に納品完了となったとします。この場合、2月末締めで請求書を発行することになりますが、請求後いつ入金されるかという「支払サイト」を契約書で定義しておく必要があります。
上記の例で2月末締めで請求書を発行した際、支払いサイトが「30日サイト」であれば、翌月である3月末に入金されることになります。仮に支払いサイトが「60日サイト」の場合、翌々月である4月末に入金されることになりますので、検収納品から入金があるまで2ヶ月もかかることになってしまいます。
まず売掛金の支払いサイトは「30日サイト」として頂けるよう、なるべく契約時に交渉しましょう。
買掛金の支払いサイトは45日が安全
続いて外注先に委託したケースを考えてみましょう。検収納品が完了すると、外注先からも請求書が発行されることになります。ここで外注先に対しても支払いサイトを「30日サイト」にしておくと、売掛金の入金と買掛金の支払いが同日になります。
入金される時間帯はクライアントによって異なります。近年では24時間送金可能な銀行も増えていますので、朝一番であることもあれば、夕方以降といった可能性もあります。状況によっては入金より先に支払いが必要になってしまう場合があります。
買掛金の支払いサイトは可能であれば翌々月15日支払の「45日サイト」、もしくは翌々月10日支払の「40日サイト」など、売掛金の支払いサイトより長い設定とさせて頂くよう相談した方が良いでしょう。
クライアントからの入金が安定していれば買掛金も30日に
とはいえ外注先も、支払いサイトは短い方が安心です。クライアントからの入金が遅れたりせず、安定して入金があるようであれば、外注先との契約も30日サイトとしておきましょう。
長期案件の場合は複数回に分けて請求させて頂くよう交渉する
システム開発案件では半年や1年といった期間を要する案件も多くあります。期間が長い案件=多くの工数が必要=予算規模も大きく、やりがいもありますが、一方で「検収納品後の一括請求」だとすると、半年や1年といった期間、収益を得られないことになってしまいます。
このような場合は、契約時点で複数回に分けて請求させて頂けるよう交渉するようにしましょう。
期間で着手・中間・検収納品後の3回に分ける
複数回に分ける方法として、「着手・中間・検収納品後」の3回に分ける方法があります。割合を「30%・30%・40%」というようにして、例えば6ヶ月見込みの案件であれば「着手時・3か月経過後・検収納品後」というように、期間で分けて請求させて頂くよう交渉します。
この方法は案件を請ける側としては良い内容なのですが、クライアント側としては着手と中間に対して明確な「納品物」が無いため、稟議を通しにくい場合があります。このような場合は次の方法で交渉してみましょう。
機能要件定義フェーズや設計フェーズと検収納品後の2回に分ける
システム開発案件では大きく分類すると「要件定義~設計~実装~テスト~検収納品」という流れになります。機能要件定義フェーズ、もしくは設計フェーズまで含め、明確な成果物がある時点で一度請求させて頂き、残りを検収納品後に請求させて頂くという提案をしてみましょう。
この場合、要件定義や一部設計が済んでいれば「機能要件定義書」や「DB設計書」「ER図」といった一定の成果物があるかと思います。見積としても要件定義や各種設計は項目として分けられていることが多いと思いますので、その分を一度請求させて頂く、という内容です。
割合は検収納品後に偏りがちですが、クライアント側としては受け入れやすい条件ではあると思います。ある程度でも事前入金は頂きたい、というときのための交渉方法として、頭に置いておくと良いと思います。
例外:分割請求を一切受け入れてもらえない場合
中には事前入金を一切受け付けないクライアントも存在します。「初取引なので本当に完成するのか不安」「完成してからでないと支払えない」といった事を言われる場合があるかもしれませんが、このような場合、請けない方が良いケースもありますので、慎重に検討する必要があります。
理由として、まず「完成するのか不安」については、「契約不適合」という条項と「返金規定」に基づいて、明らかに要求を満たせず完成に至らないような場合は、返金しなければいけないというように「契約」で取り決めることでクリアになります。
また、「完成してからでないと支払えない」については、決算時期や資金繰りの影響があるとしても、納品後に支払う金額は同じです。請け負うこちら側としても「納品後に請求しても、支払ってもらえるかが不安」とも感じます。
このように分割請求を一切受け入れてもらえない場合は、クライアント側の経営状況も考慮して、少しでも不安があれば請けないという判断も選択肢に入れて交渉することをお勧めします。
請け負う側としては事前入金のお願いをなるべく避ける
事業主は常に資金繰りと隣り合わせです。そのため、時にはこのような考えになることもあります。
「ちょっと今月、末日より前に資金が不足してしまいそうだから、少し早めに振り込んでもらえないか、相談してみようかな。。。」
こんな時には、クライアントに相談するよりもまず、ご自身の預貯金で一時的に対応したり、身内に相談した方が良いでしょう。
なぜならば、クライアントに相談した場合、クライアントに対して「資金繰りがギリギリなんだな」という印象を与えてしまいます。外注へ仕事を委託する側になると感じることですが、「資金繰りがギリギリな会社」と「資金繰りに余裕を感じる会社」だと、どちらに委託したいでしょうか。単月の小規模案件であれば違いが無いかもしれませんが、数ヶ月~1年といった期間の案件であれば、「資金繰りがギリギリな会社」への委託は、不安を感じると思います。そのため、自然と小規模案件しか頂けないようになってしまいます。
もちろん単価などの条件や人間関係など、他にも委託の選定条件はありますし、クライアントに気軽に事前入金をお願い出来る関係性もあるかもしれません。しかし、上記の通り「発注者側の意識」と、それによる「中長期案件の獲得」には大きな影響があることを意識した方が良いです。
まとめ
- 売掛金の支払いサイトは30日で交渉
- 買掛金の支払いサイトは売掛金より長い方が安全
- 長期間の案件では複数回に分けて請求させて頂くように交渉
これらの内容を意識して、入金サイクルをコントロールすることで、安定した経営に繋がります。資金繰りが安定していると気持ちにも余裕が生まれ、それが対外的には信用信頼に繋がり、良い受注に繋がるという循環が生まれるようになりますので、常に意識することをお勧めします。
以上、売掛と買掛の支払いサイトを理解して入金サイクルをコントロールするために意識すべき内容でした。








