案件を受注するために避けては通れない「見積書」。ホームページを作るにもシステムを開発するにも、必ず作成する見積書ですが、みなさんどのように作成されておりますでしょうか。
「ホームページ制作:1式:〇〇万円」といった男気のある見積書も決して間違いではないのですが、「内訳を書いて下さい」「1式の根拠を教えて下さい」といった指摘を頂くかと思います。また、もし「1式」で受け入れてもらえた場合、「あれもこれも含まれていると思っていた」といった、思い込み論争に巻き込まれてしまう可能性があります。
ここでは見積書を作成する際に重要な項目のポイントをまとめて書いてみました。
ホームページ制作案件の見積項目例
要件定義
要件定義は制作対象を定義する重要な項目です。「これもやってもらえると思ってた」といった事にならないよう、制作対象の認識をクライアントとしっかり合わせておく必要があります。規模によりますが、少なからず工数が発生する内容ですので、項目として入れておくべきだと考えます。
要件定義の確認ポイント
- 各ページの簡単なワイヤーフレーム(構成)と、全体のサイトマップを作成して、全体のボリューム感を確認する
- クライアントの確認期間も考慮してスケジュールを作成する
- デザインの参考サイトやイメージカラーを提示してもらう
- ドメインやサーバーは提供されるかどうか
- GoogleMapの埋め込みや翻訳等の外部API利用があるかどうか
デザイン
ホームページ制作の中で、見積の観点でも一番苦労するのがデザインです。苦労する観点として「デザインに対する費用は安く思われがち」という事と、「感性が合わない場合の落としどころが見えなくなる」という点があります。
デザインの確認ポイント
- PC版とSP版どちらも作成するのかどうか
- 修正回数は何回までとするか
- 全画面を作成するか、主要ページだけ作成してコーディングで展開するか
- 写真素材は提供してもらえるか
- イラストやグラフの作成があるか
- 企業やサービスのロゴ作成が必要かどうか
コーディング
HTML、CSS、javascriptを中心として、デザインを元にコーディング対応するための項目です。
コーディングの確認ポイント
- レスポンシブ対応のブレイクポイント
- BootstrapやSassなどのフレームワークを使用するかどうか
- コーディングルールの指定があるかどうか
- 動作検証のOSやブラウザの種類とバージョン
- アニメーション等の演出の有無と、その内容について
- グラフ類の実装があるかどうか
CMS組み込み実装
近年多く採用されている WordPress や Drupal 等のCMS組み込み実装を含んだホームページ制作の場合に必要となる項目です。
CMS組み込み実装の確認ポイント
- CMSの種類の指定があるかどうか
- 管理画面で更新対象とする対象がどこか
- データ登録や移行が作業に含まれるかどうか
- セキュリティ関連でどこまで対応する必要があるか
進行品質管理費
主にクライアントと実装間のやり取りにおいて、スケジュールに沿った進行管理、追加要件が出たときの方針決め、提出前のチェックなど、案件を納品リリースまで滞りなく進行させるための費用として項目に乗せておきます。全体の10%~20%程度としておくことが一般的です。
システム開発案件の見積項目例
システム開発はホームページ制作と比較して、予算や期間を含め規模が大きい傾向があります。そのため、見積はより慎重に検討する必要があります。
要件定義
システム開発案件において要件定義はとても重要です。クライアントから求められている要求に対して、業務フローやユースケースを整理して、必要な機能を洗い出し、WBS(スケジュール)に落とし込む、といったことをクライアントとすり合わせながら定義していきます。
要件定義を整理していない状態ですと、必要な機能や工数の算出が曖昧になってしまい、見積精度が低くなってしまいますので、案件規模によってはまず要件定義のみ契約させて頂いて、要件を整理してからプロジェクト全体の見積を提出させて頂く、という流れでご提案した方が良いでしょう。
確認ポイント
- RFP(提案依頼書)の読み合わせ
- 業務フローやユースケースの整理
- 必要な機能やアカウントの権限など主要要件の整理
- 非機能要件の整理
- WBS(スケジュール)の整理
- 想定している実装環境(プログラム言語、フレームワーク、DBなど)の整理
- ドメイン及びサーバーが用意されるかどうか
- SSLの指定があるか
- 決済や外部サービス利用の有無
- 納品物の確認
基本設計
要件定義で定めた内容を元に、より具体的に一覧や設計に落とし込みます。基本設計は主にクライアント向けに伝わるような形で整理する内容です。外部設計とも言います。
基本設計の確認ポイント
- 機能要件一覧
- 業務フロー図
- システム構成図
- 画面設計
- 帳票設計
- バッチ設計
- データベース設計
- テーブル定義
- ER図
- 外部インターフェース設計
詳細設計
要件定義及び基本設計で定めた内容を元に、主にエンジニア向けに伝わるような形で整理する内容です。内部設計とも言います。
詳細設計の確認ポイント
- ビジネスロジックの整理
- 共通化の設計
- バリデーションの整理
- 複数名で実装する際の担当機能の割り振り
- 作成する資料の例
- クラス図
- コンポーネント図
- オブジェクト図
- ユースケース図
- シーケンス図
デザイン(UI/UX)
システム開発において、特に業務管理や販売管理などの管理系システムについては、パッと見の印象やアニメーション等の演出といった観点でのデザインよりも、「UI/UX = 見やすさや使いやすさ」という観点での「使い勝手の良いレイアウトデザイン」を求められることが多いです。
但し、大規模のECシステム構築や、エンタメ性の高いマッチング系サービスなど、ビジュアル要素も求められるようなシステムの場合は、見た目の重要性も高くなります。
システム開発案件における「デザイン」は、「UI/UX」と「ビジュアル要素」の両面で検討する必要があります。
デザインの確認ポイント
- ホームページ制作の確認ポイントと同内容
- フロント画面と管理画面で必要なデザインをそれぞれ確認する
マークアップ
ここでのマークアップは静的コーディングまでの範囲です。開発実装に含めた工数としても良いのですが、フロントエンドとバックエンドの役割は異なりますので、見積項目としては分けておいた方が良いと考えます。
マークアップの確認ポイント
- ホームページ制作の確認ポイントと同内容
開発実装
開発実装で最も重要なのは、業務フローやビジネスロジックの理解です。業務フローやビジネスロジックを理解せずに実装を進めてしまうと、ある程度進行して進捗確認する際に大きな手戻りが生じて修正に対応できず、破綻してしまうことにもなりかねません。
セキュリティも同様で、個人情報やクレデンシャル情報の取り扱いについて、理解があるかどうかで設計や実装に大きな影響があります。
開発実装の確認ポイント
- 実装に対して必要なスキルセットがあるかどうか
- 業務フローやビジネスロジックを理解した設計及び実装が可能かどうか
- 複数人体制で実装する場合、必要な体制と環境を整えられるかどうか
- ソースコードの品質を担保できるか
- セキュリティに対する理解があるか
テスト
システム開発案件においてテストは不可欠です。テストの種類ごとに見積項目として計上することはなくても、開発実装全体の10%~30%程度がテストの工数として積まれることが多いかと思います。
テストの確認ポイント
- 単体テスト(UT)
- 実装者による「ホワイトボックステスト」と、利用者観点での「ブラックボックステスト」
- 結合テスト(IT)
- 単体テストに加え、データの受け渡しを確認する「インターフェーステスト」
- 総合テスト(ST)
- 一通りの実装が完了した状態で、クライアントに報告する前に、主に実装側が実施するテスト
- シナリオテスト
- 性能テスト
- 負荷テスト
- 脆弱性テスト
- 一通りの実装が完了した状態で、クライアントに報告する前に、主に実装側が実施するテスト
- 受入テスト(UAT)
- 実運用を前提に、主にクライアントが実施するテスト
- モンキーテスト
- シナリオテスト
- ユーザビリティテスト
- 実運用を前提に、主にクライアントが実施するテスト
納品物
システム開発案件においては、ソースコードをアップロードして納品となることはあまりなく、各種設計書やマニュアルを納品物として求められることが多いです。
見積に含んでいない状態で、納品間近にこれらの資料を求められると、「見積に無いので対応できません」「いや、無いと困ります」といった押し問答になりかねません。
納品物の主な一覧
- 機能要件一覧
- 業務フロー図
- システム構成図
- 画面設計書
- 帳票設計書
- バッチ設計書
- データベース設計書
- テーブル定義書
- ER図
- 外部インターフェース設計書
- 性能テスト報告書
- 負荷テスト報告書
- 脆弱性テスト報告書
進行品質管理費
ホームページ制作における新高品質管理と同様ですが、システム開発案件は期間が長くなりがちなため、下記のような対応も重要になります。
- 定例を含む打ち合わせの設定や管理、アジェンダの用意と議事録の共有
- BacklogやRedmineなどのチケット管理による課題管理
リリース
本番に公開するためのリリース作業です。本番環境へのデプロイ、IP制限やBasic認証をかけている場合はそれらの解除、といった対応です。
見積の基準について
営業的な見積の出し方や基準はこちらの記事にまとめていますので、併せてお読みください。
まとめ
ホームページ制作とシステム開発それぞれ、見積書を作成する際に重要な項目のポイントをまとめてみました。もちろん案件ごとに整理する必要がありますが、共通する内容も多いかと思いますので、見積書を作成する際のご参考になればと思います。










